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その時に応じて流行ってる事を

ポケモン第五世代シングルバトルにおける環境の変遷 その1

 1.序章

 ポケモンバトルの歴史は長い。古くは第一世代から公式大会が開かれていた。世代が進み、ダブルバトルが導入され、対戦のバランスにも大きく手が加えられた。第四世代に入るとwifiを利用したネット対戦が可能になり、競技人口の増加と共に構築はどんどん洗練されていった。

 第四世代には結論構築と呼ばれるものが存在している。

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 ゲンガーの枠は場合によってラティやマンダなど、様々なポケモンが採用された。

 この構築は個々の性能の高さはもちろん、タイプ補完にも優れていて大いに流行した。しかし、第五世代が幕を開けると、この旧世代の帝王は蜃気楼の如く無散して二度と姿を現すことはなかった。

 

 2.第五世代の幕開け(BW環境初期)

 第五世代が始まり、様々なポケモンが脚光を浴びた。その後強さが立証されて様々な構築に入ったポケモンも居れば、使用感が悪く中堅にとどまったポケモンもいる。

 初めに名を挙げたのはテラキオンナットレイブルンゲルだった。

 テラキオンは岩+格闘の優秀な攻撃範囲を持っている。このポケモンボーマンダを過去の存在にした。

 ナットレイブルンゲルの組み合わせ、通称ナットゲルは相性補完の美しさが芸術の域に達していた。ナットレイの苦手とする炎格闘をブルンゲルが受け、ブルンゲルの苦手な草、悪、ゴーストをナットレイは苦にしない(当時、鋼が悪を半減する)。

 第四世代の構築ではこれらに対処できず、一瞬で瓦解した。

 ほかにもシャンデラはCの高さが注目されていたが、これは実戦を通して否定されてマイナー寄りのポケモンという扱いを受けた。

 

 乱数調整の技術が確立されると、今までは厳選の面倒だったボルトロスが次第に使われ始める。10万/めざ氷/とんぼ返り/電磁波@達人の帯 といった個体がよく使われた。ガブリアス対面で勝ち切れる上に、とんぼ返りでラティオスを大きく削れる。バンギラスにもそれなりに有効な技だった。

 そしてドリュウズが頭角を現し、天候パの時代が訪れる。

 ドリュウズはAの種族値以外は目も当てられず、メインウエポンの地震は強力だが他の攻撃技はいわなだれと恩返し(アイアンヘッドはBW2から)くらいしか無いにも関わらず、無類の強さを発揮した。

 当時は特性による天候変化は永続(6thで廃止)だった。天候を書き換える手段が無ければ、砂下で素早さが2倍になったドリュウズを上から殴れるポケモンは先制技持ちを覗いていない。その上で、剣の舞地震の指数の高さは耐久に振らないガブリアスを一撃の元に粉砕する。

 ところで、特性《砂起こし》を持つポケモンは二体いる。バンギラスカバルドン。前者は第四世代で結論構築の一角を担った厨ポケであり、第五世代でも高い評価を保っていた。しかし先に開発されたのはカバルドンドリュウズ(通称カバドリ)であった。

 カバルドンでステロと欠伸を撒いて、ドリュウズが舞って全抜きするこの構築は対策しない限り勝つのは非常に困難な相手だった。初期は残りの四枠はいろいろなポケモンが入っていたが、最終的にはらみるーカバドリと呼ばれるこの形で落ち着いている。

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 ここでは事前知識として第五世代の構築理論について軽く説明する。

 フェアリータイプのない当時、最強のタイプとはドラゴンであった。攻撃面では鋼に半減されるのみ、防御面でも抜群を取れるのはドラゴンと氷のみ。

 加えて多くのドラゴンは優秀な数値を兼ね備えていた。ラティオスが高いSで上から拘り眼鏡+流星群を放つだけで大半のポケモンは死滅する。

 対抗できるのは鋼タイプを於いて他にない。

 だからドラゴン+鋼の組み合わせは欠かせない。加えて水タイプも多く採用された。水は鋼に強くドラゴンに弱い。ちょうどじゃんけんの三すくみのようになっている。

 水の代わりに炎でもいいじゃないか、むしろ炎のが鋼相手には良いのではないかと思うかもしれないが、環境に蔓延るのはバンギラスガブリアス、そしてこのカバドリである。水の方が優先度が上がるのは自明だ。

 実際、これから紹介するほぼすべての構築で龍+鋼+水が採用されている。構築理論説明終わり。

 

 カバルドンドリュウズは第五世代の環境に大きく影響を及ぼした。第四世代と比較して、一度ポケモンの積み技が展開された時それを止めるのが圧倒的に難しいことをプレイヤーはようやく理解した。

 砂下でのドリュウズ剣舞、あるいはウルガモスの蝶舞、パルシェンのからやぶ、ポイヒローキキノガッサ。様々なポケモンが圧倒的な抜き性能を会得した結果、従来の対処法、すなわち気合の襷やソーナンスによる道ずれ戦法による画一的な方法は通じないのだと。

 

 その理論を裏付けするように電磁波砂と呼ばれる構築が現れた。

 

 電磁波砂構築ははじめバンギ/ガブ/ドリュ/ボルトまでが確定で、あとの二体が自由枠だった。この構築が何をするかというと、バンギとドリュはシナジーを発揮する訳だがそれだけにとどまらずバンギラスボルトロスで相手に麻痺を撒いてガブリアスが身代わりを使い始めたのだ。

 ガブリアスの特性は《すなかくれ》。砂下での命中を8割にする特性である。その上で麻痺が入れば、相手がガブリアスに攻撃を当てられる確率は0.8*0.75=0.6。更にお香(命中を0.9倍にする)を持てば攻撃は54%。実に2回に1回しか当たらない。そして身代わりを張ったガブリアスはゆうゆうと剣の舞をして力を蓄え敵をなぎ倒す。

 実を言えば第四世代にも少数ながら似た事をしていた人がいた。それが第五世代で着目を浴びた理由は新技:ダブルチョップにある。これはドラゴンクローと同程度の威力を持ちながら2回攻撃で、身代わりや襷を貫通できる。

 さらに言えば脅威となるのはガブリアスだけではない。この構築にはドリュウズも採用されている。両方を止めるのは難しい。

 最終的にガブとドリが両居する形はカバドリにも雨にも不利がつく(カバもドリも電磁波が通らない)ので廃れたが、ドリュウズを抜いてより対応力を上げた構築は今後も一定数使用され続けた。

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 これはローブシンがカバドリを、ボルトロスが雨を見ている。

 

 このころになると、バンドリも使われはじめた。

 電磁波砂にドリが入ったのが先かバンドリが流行ったのが先かは定かではないが、当時有名だったのはこの形。2011年4月に生まれたもの。

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 単体性能*1の高いスカーフバンギラスと襷ドリュウズを軸に、珠マンダ、ラムウルガ、残飯ウルガ、オボンローブで脇を固めている。

 このころは雨が余りいなかった。

 1か月遅れで前述したらみるーカバドリが完成し、雨パも時間の経過と共に勢力を増すとこの形のバンドリは途端に厳しくなる。

 その結果、雨に強いナットレイボルトロス、カバドリに強い水ロトム、或いは双方に強いキノガッサなどが採用され始めた。

 バンドリは構築の幅が広く、以降もbw環境では様々な型が存在した。今回はそれは紹介しない(もはや失われた上、使う機会もない知識なので未来でも紹介はしない)

 

 雨。そう、雨パもこの時期に数を増やした。

 電磁波砂とカバドリが両方岩/地面主体であれば、優位である水タイプでありながら天候変化で相手の妨害ができる雨構築の研究が進むのは自然の流れと言えた。

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 おおむねこんな感じの雨パが量産された。

 ニョロトノはスカーフか水ジュエルで単体性能を高めた個体が多かった。

 キングドラは9割眼鏡で1割が命の珠。雨下+眼鏡+波乗りはガブリアスが消し飛ぶ。

 

 余談になるが、雨パに入れて強いとされるのはナットレイラティオスだった。

 ナットレイは雨パ相手にも強いが、雨パで使っても強いポケモンである。理由は前者はキングドラのメインウエポンである水/龍を半減できること。後者は弱点である炎ダメージを雨で半減できること。

 ラティオスに関しては、眼鏡が主流で技構成は当時波乗りと雷を採用している個体が多かったのだが、雨下の波乗りは1.5倍、雷は必中だったので強いと言われていた。今では疑問視している。当然、相手のラティオスにも利益があるので使われても強い。

 

 逆に雨に強いポケモンは前述のラティ/ナットを除けばキノガッサバシャーモボルトロスなどがいた。

 キノガッサニョロトノを起点にハメれる。

 ボルトロスニョロトノに強く、キングドラも電磁波で麻痺させることができる。

 バシャーモは特性の加速でキングドラを素で抜くことができた。上から珠飛び膝蹴りを叩き込んで全てを葬った。

  特にキノガッサは重宝された。天候変化ポケモンの全てに有利を取れるからである。

 余談終わり。

  

 さて、砂、雨とくれば残るは晴れ(キュウコン)と霰(ユキノオー)である。

 晴れの効果は雨の正反対であり、『炎攻撃1.5倍、水攻撃半減』。

 霰の効果は砂に似ていて、『氷タイプ以外に毎ターンのスリップダメージ』。

 キュウコンは一時期キュウコンクレセなるガラクタが存在した。また、夢特性のサンパワーリザードンを活用しようと試みた者もいた。結果は芳しくなかったように思う。一応日照りにも《すいすい》や《すなかき》のような天候下で素早さ2倍の特性《ようりょくそ》があった。ただし、名前の通りこの特性を持つポケモンは草タイプである。となれば日照りの効果である炎タイプの技の威力1.5倍は活用できない。草タイプのポケモンは炎タイプの技を使えない。加えてキュウコンが弱い。やれることは命中6割のさいみんじゅつだけ。構築の足を著しく引っ張っていた。

 ユキノオーもほとんど同条件だった。天候下で素早さ2倍の特性は当時存在しない。実質的に霰の利点はスリップダメージだけ。にもかかわらず、ユキノオー入り構築は一勢力を築いて実績を残している。キュウコンとの相違点は、ユキノオーは単体性能がそれなりに優れていたことに尽きる。端的に言えばユキノオーは足を引っ張らない。

 さて、ユキノオー入り構築は二つに分かれる。霰を積極的に生かすユキトド構築と、霰は単なる相手の天候へのメタとして用いるノオースタン構築である。

 ここでは同時に両方を紹介する。

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 まずは名前から。ユキトドは名前の通りユキノオートドゼルガの名前から取っている訳であるが、ノオースタンのスタンはstandardから来ている。これは天候や壁(リフレク・光の壁)に依存した強烈なギミックは使っていない"普通の"構成ですよという意味。グッドスタッフもほぼ同義語。

 

 ユキトドの説明をすると、トドゼルガには《アイスボディ》という特性がある。本来霰下だと氷タイプ以外のポケモンは最大HPの1/16を毎ターン削られる訳だが、アイスボディは逆で毎ターン1/16回復する。食べ残しを持てば更に1/16回復するから毎ターン1/8回復になる。身代わり→守る→身代わり→守るを繰り返してもHPは減らなくなり、相手は霰のスリップダメージで削れていく。そうやって相手を嵌めるのが無限トドゼルガ戦法であり、ユキトドである。

 同類の戦法としてバンギグライも存在する。こちらはグライオンの特性ポイズンヒールと砂嵐を利用する。

 

 ユキノオー構築には多くの場合でガブリアスが採用される。これらは十中八九スカーフ持ちである。理由として、ユキノオーのカウンターはウルガモスであり対面すると蝶の舞をしてくる訳であるが、これを上から叩き潰す為である。

 ボルトロスではなくサンダーなのは相手のハッサムが重いから。ローブシンユキノオーが唯一苦手とする天候変化ポケモンバンギラス相手に強いからよく入る。

 

 以上が2011年上半期に流行した構築である。天候パはドリュウズを皮切りに様々なものが現れ、無天候パーティーは樟脳のように消え失せたように見えた。

 しかし水面下ではオフ会をメインに幾度となく使用され、時には一定の結果を残した無天候の構築があった。1戦が長くレーティングには不向きで、個体用意の難易度も高い。それ故に流行することは無かったが、それでも対策無しではどうあがいても勝てない、第五世代特有の強さをその構築は有していた。その構築の名を"受けループ"という。

 

 次回、無天候構築の逆襲!BW環境後期からBW2編!

 予定は未定です。結構疲れたので

 

 

 

 

 

*1:おおむね1v1の強さを意味する用語、対面性能ともいう